ごあいさつ | 呉服の鈴屋

greeting

店主からのご挨拶

呉服の修業を終え、生まれ育った美濃市へ戻り「呉服の鈴屋」の三代目を継がせていただいております。
先ずもって、弊店サイトへアクセスいただきまして誠にありがとうございます。
日本の伝統衣装文化、その成り立ちに畏敬の念を持ち、またそれを扱うことのできる生業に身を置けることに日々感謝をしております。

作り手の代弁者として

学生時代からファッション、なかでもテキスタイルに興味を持ち、アルバイト代の多くを衣服につぎ込むほどでしたが、その興味はそのまま着物へとスライドしました。
和服と洋服の最も大きな違いは、形に制限のない洋服に対し、和服は既に形が決まっていることです。
そのため、和服は形やシルエットではなく柄をはじめ、素材や染織技術が発達したと考えます。
そんな呉服を深く知ろうと、全国の産地や生産現場をまわり職人さんの声を直接聞き、仕事場の雰囲気を肌で感じ、手間を惜しまない熟練した技術を多く目の当たりにしました。
そして様々な技術を知れば知るほど一層呉服の魅力に惹かれ、一つひとつの商品が多くの人の手の連鎖によって生み出されていることに素直に感動しました。
ある時、一人の寡黙な職人さんが手を休めることなく、独り言のように「僕はお客さんに直接会うことはないし話すのも下手だけど…、代わりに何でも教えますので多くの人に僕たちの仕事のことを伝えてほしい」と言われたことが大変印象に残っています。

和装文化の末永い継承を目指して

しかしながら最近では、一般に売られている呉服は友禅であってもインクジェット捺染などの量産品が消費者の知らないうちに多くを占めるようになりました。またそれに反比例し、数少ない本物の呉服は原価に対して非常に高額で売られ、一般には手の届かないものとなってしまっているのが現状です。
職人の側からすれば、手間を掛けてこだわって作るほど量産品に対する価値が必要以上に上がることで価格も上がり、結果として数が売れずに仕事が減ってしまうといった負の連鎖が生じています。
その背景として、幾重の流通経路や古い商習慣、販売側の高い経費、そして多くの消費者が本物の呉服を見る、また知る機会すらないのが原因だと考えます。
現在、多くの生産現場はぎりぎりのところで踏ん張っています。
仕事に真摯に取り組まれている職人さんが嘆く現状を、微力ながら何とか打破したいと強く思います。
作り手の思いの籠った本物の呉服を手にした時の感動を、適正な価格で一人でも多くの人に伝え、日本伝統文化の衣食住の「衣」の末永い継承を願い、直向きに呉服に携わって参ります。

独りよがりの長い挨拶となりましたが、何卒よろしくお願い申し上げます。

呉服の鈴屋 店主  服部修史